令和5年度の必須科目Ⅰ-1の私なりの回答をまとめてみようと思います。
回答内容に問題や改善点があれば是非コメントください!
※小泉士郎@技術士(建設・総監)さんより、論文を添削して頂きました。
添削内容と添削後の論文も後半に記しておきます。
また、添削内容の詳細は以下のnoteにも公開されておりますので、是非ご覧ください。
今回は生成AIについてです。
過去問のリンクはこちら。
16 情報工学部門|公益社団法人 日本技術士会 (engineer.or.jp)
まず、論文の必要な文字数は
試験科目 | MAX記述量 | 配点 | 回答時間 |
---|---|---|---|
I 必須科目I | 600字×3枚 | 40点 | 2時間(10:00〜12:00) |
II 選択科目 + III 選択科目 | 600字×3枚 + 600字×3枚 | 30点 + 30点 | 3時間30分(13:00〜16:30) |
なので、最大1800字ですね。
これを意識しておきましょう。
IPAの論文と比較すると、
試験区分 | 試験時間 | 必要MAX文字数 |
---|---|---|
IPA論文試験(午後II) | 2時間 | 3600字(800+1600+1200) |
技術士二次試験(論文) | 5時間30分 | 5400字(1800+1800+1800) |
なので、IPA試験1.5回~2回分程度ですね。
午後2を2回分くらいなら、まぁなんとか・・・・って感じですね。
IPA試験との大きな違いは、コンピテンシーを意識して書けるか、だと思っています。
コンピテンシーは以下の8つ。
常に意識していこうかと思います。
- 専門的学識
- 問題解決
- マネジメント
- 評価
- コミュニケーション
- リーダーシップ
- 技術者倫理
- 継続研さん
問題文
Ⅰ-1 生成AIの技術レベルが著しく向上し、用途も広がっている一方で、その利活用・普及に伴う社会的課題も顕在化してきている。このような状況を踏まえ、生成AIを活用する具体的な情報サービスを想定し、その構築や運用を行う立場で以下の問いに答えよ。
(1)技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題をのうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、情報工学部門の専門用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行にあたり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
必須Ⅰ コンピテンシーの確認
コンピテンシーは以下の記事で掘り下げて確認していますので、興味があればどうぞ。
試験区分とコンピテンシーの対応関係は以下の通りです。
必須Ⅰ | 選択Ⅱ-1 | 選択Ⅱ-2 | 選択Ⅲ | 口頭試験 | |
---|---|---|---|---|---|
専門的学識 | ○ | ○ | ○ | 〇 | |
問題解決 | ○ | 〇 | |||
マネジメント | ○ | 〇 | |||
評価 | ○ | 〇 | ○ | ||
コミュニケーション | ○ | ○ | ○ | 〇 | ○ |
リーダーシップ | ○ | 〇 | |||
技術者倫理 | 〇 | 〇 | |||
継続研鑽 | 〇 |
問題解決とは
・問題の要因や制約を抽出し分析する
・複数の選択肢を提示し、合理的に提案及び改善をしていく
評価とは
・途中段階の結果(進捗度合いや達成率)、最終的な成果(当初計画との比較など)、波及効果、を評価できる能力
コミュニケーションとは
・海外プロジェクトで、多面的な価値観を尊重して協調する。
・そのほかは普通のコミュニケーションと同義(多様な関係者は特に意識しておく)。
技術者倫理とは
・公益確保 (定義の1番目前半:公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮)
・社会の持続可能性確保 (定義の1番目後半:地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能性の確保に努め)
・法令遵守 (定義の2番目)
・説明責任 (定義の3番目) 2段階ある、範囲の明確化と責任を負うこと
これが求められている観点ですね。
(専門的学識は除いて)
生成AIの問題点、内容、解決策の洗い出し
初めて技術士の2次試験の問題に取り組みますが、IPAの問題と違い、取っ掛かりが自分の知識オンリーな感じで難しいですね…
まずは、生成AIの問題点について洗い出してみたいと思います。
問題点 | 内容 | 解決策 |
---|---|---|
ハルシネーション | AIが幻覚を見ているかのように、誤った情報を利用者へ与える | 出典の確認 AIから得られた情報のソースを確認する |
バイアス | ポジティブ、ネガティブのどちらかに偏った情報を基に回答を生成するリスクがある | pros、consの両方の材料をAIに与えたうえで利用する pros、consの両方の材料を与える順番を逆にして影響を確認する |
法規制、著作権侵害リスク | 個人情報や機密情報等利用規制のあるインプットデータによる情報漏洩 | ガイドラインの確認、影響範囲の確認、利用目的・生成AIツールの利用規約の確認 |
格差拡大のリスク | 生成AIツールの活用度による個人間のバラつきが、情報格差の更なる拡大を生む | 教育、ガイドラインの制定 |
(1)回答作成 600字以内
(1)技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
先ほどの表から3つの課題を選ぶと、
・ハルシネーション
・バイアス
・法規制、著作権侵害リスク
が課題設定として書きやすそうかな、と思っています。
観点を明記したうえで課題を示す、ですね。600字以内には押さえたいので、割と簡潔に書かないとダメかもですね。
それでは書いてみます。
生成AIの利活用は企業の生産性を圧倒的に向上させ、業務改革を実現するために必要なツールであると昨今強く認識されている。しかし、生成AI活用上の課題を的確に把握していないと危険である。
私が生成AIに関する課題・観点として挙げるのは以下の3つである。
1.ハルシネーション
2.バイアス
3.法規制、著作権侵害
1.ハルシネーションの課題および課題設定の観点について
ハルシネーションとは幻覚のことである。つまりAIが幻覚を見ているかのように、事実とは異なる内容をあたかも事実のように利用者へ伝え、利用者が受け取った情報をそのまま活用することだ。ここでの課題は大きく2点で、1つは生成AI側の情報生成の精度の課題、2つ目は情報を受け取った側のリテラシーである。
2.バイアスの課題および課題設定の観点について
バイアスはAIがポジティブまたはネガティブな情報に偏って返答することである。課題の観点としてはAIへの情報の学習のさせ方により、ポジティブまたはネガティブな情報のみを利用者へ与えてしまい、利用者側にバイアスを発生させてしまう可能性がある。
3.法規制、著作権侵害の課題および課題設定の観点について
生成AIへ与える情報が機密情報であった場合、生成AIの返答内容が著作権侵害や法を犯すリスクが発生する。利用者がWebを閲覧するのと同じ感覚で単純に情報を利用しただけでこのようなリスクが内在する。
(593字)
かなり抑えめに書かないと文字数パンクしそうです…
(1)~(4)で1800字なので、後半で調整すれば良いかもしれませんが、あまり盛りだくさんで書ける余裕はなさそうですね…。
ここは問題解決に焦点を当ててみました。
(2)回答作成 600字以内
(2)前問(1)で抽出した課題をのうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、情報工学部門の専門用語を交えて示せ。
重要と考える課題は「ハルシネーション」である。理由は、事実誤認を広めることで、生成AIツールの公益性が損なわれる可能性があることである。
生成AIによるハルシネーションのリスクを正しく認識し、対応することが重要。
ハルシネーションへの解決策は以下を挙げる。
・利用者による情報のソースの確認
→得られた情報を利用者自ら確認する姿勢が大事である。
・生成AI側へ出典の提示を求める
→生成AI利用者側のリテラシーを高めていく、AI側に出典を求めるなど利用者側のリテラシーを高めていく必要性あり。
・生成AIの回答の比較、追加情報の付与により回答範囲を狭める
→生成AIに何度も同じ質問をして回答が違っている場合はハルシネーションの可能性を疑う。
追加情報や制約条件を与えることで回答範囲を狭めていくことで、ハルシネーションリスクを低減できる。
また、複数の生成AIツールを利用するなども考えられる。
生成AI側の精度向上に期待するよりも、利用者側のリテラシーを高めていくことがハルシネーションリスクとの正しい向き合い方であると考える。
そのため、生成AI利用のためのガイドラインの制定など、広く一般へ向けた取り組みが必要である。
(513文字)
問題解決、コミュニケーション、技術者倫理(公益確保)に焦点を当てて書いてみました。
(3)回答作成 300字程度
(3)前問(2)で示した解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
波及効果、はどう捉えるべきか悩みどころですね…。
でも、課題が解決することによって生まれてくる波及効果ですから、それによって次に期待できるようなことなどが良いのかな、という観点で行ってみましょう!
上記課題をクリアできると、労働生産性の向上によりルーティンワークの処理時間が削減され、創造的な仕事への時間を余力が生まれる。
これにより、国際競争力の向上、更なる高付加価値商品の開発の推進など経済的にも労働者の価値向上など多面的な波及効果が見込まれる。
その一方で、ボトルネックとなるのは利用者のITリテラシーの向上だと思われる。多くの現場でDX推進が求められている現在でも、利用者のITリテラシー、特に中高年層のITへの心理的な拒絶反応が大きい現場が多い。対応策としては、日常の業務フローを生成AIを利用するように変更し、実際に利用させ経験値を積ませることが具体的かつ効果的な対策である。
(293字)
ここは評価、に焦点を当てて書くべきですね。
(4)回答作成 300字程度
(4)前問(1)~(3)の業務遂行にあたり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
ここは技術者倫理や社会の持続可能性の定義を確認してから回答作成を始めた方が良さそうですね…
コンピテンシー「技術者倫理」の定義は以下のとおりです。
- 業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
- 業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
- 業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
また、持続可能性は環境保全の観点で進めるとわかりやすいかもしれません。
では、ちょっと書いてみます。
技術者倫理の観点から必要な要件は以下である。
・インプットデータの機密性、法規制への影響確認
・個人情報などデータ利用目的の妥当性
・生成AIツールの利用規約の確認
・生成された情報の影響範囲の確認
留意点はインプット・アウトプットそれぞれの情報の中身の妥当性の確認が肝要である。公益性を担保するため、法規制は当然として、収集したデータの目的外利用となっていないか注意する必要がある。
また、持続可能性観点としては、生成AIによる消費電力の観点がある。データセンタの消費電力量は2030年までに上昇を続ける可能性が高く、生成AIにより消費電力は急上昇する可能性がある。従って、生成AIの活用シーンを取り決めるなど、乱用を防ぐ枠組みも有用である。
(320字)
まとめ
全部で1719字でした。
思ったことを文章にしようとすると文字数オーバーになってしまうので、あんまり沢山書けないですね。
要点を並べるくらいのイメージで丁度良いのかもしれません。
こんな感じで暫く色んな過去問の回答を載せていきたいと思います!
上の内容にコメントがあればいつでもご連絡ください!
勉強中の身なので、非常に助かります!
添削結果(小泉士郎@技術士(建設・総監)さんより)
SNSに添削してくれる方おりましたら~~~、と投稿したところ、小泉士郎@技術士(建設・総監)さんに添削して頂けました!
丁寧に添削して頂き非常に勉強になりました!
書きっぱなしではなく添削して頂くと自分では気が付かなかったことを指摘頂け大変有益です!
論文を書いたら一度添削してもらうことを強くオススメします!
以下に、頂いた指摘事項と添削後の論文を紹介いたします!
指摘内容(抜粋)
指定された解答用紙の枚数に収める、書き出し及び段落変更後の文章は一マス開ける
これは盲点でした。
たしかにIPA試験の論文でも原稿用紙ピッタリに収めて書くことはなく、段落下げや箇条書きを利用するため、文字数だけ意識してギリギリに収めても意味はないですね。
回答用紙もWordファイルで頂いたので、今後は原稿用紙に収まる字数であることを確認します!
各設問の解答に「タイトル」を付けること
IPA試験の論文では当たり前にやっていたことを全くやっていませんでした。タイトルを付けてから本文を書き始めます。
話し言葉ではなく書き言葉で記述すること
例)×:活用することだ
〇:活用することである
IPA試験の論文でもフンダンに話し言葉を使って合格していた予感…(笑)
設問(1)の「観点」とは?
これは完全に記載漏れですね。課題の内容に終始して観点を記載していませんでした…。
しかし、観点を明記するって難しいですね。と思っていたら、具体的な例を挙げて頂きました。
この指摘の通り、倫理的観点から、とか、技術的観点から、とかを付けてどのような課題があるかを言及すると説得力が増しそうです!
これは今後意識していきます!
課題の記載順序
最重要課題を最後に持ってきて、という指摘を頂きました。
IPA試験の論文の時は最重要課題は一番最初に書く癖があり、これも直していきたいと思います。
最後に最重要課題を持ってくれば、その後の設問でつながってくるので可読性が上がりそうです。
他にも指摘事項はありますので、是非noteの方を参照してください!
添削後の論文
添削後の論文をまとめると以下のようになっています。
ものすごく読みやすいです…
添削をお願いして良かった…本当に…
noteのコメントにて
noteで本論文の添削が公開された後、以下のコメントを頂きました。
仰る通りで大変参考になりました!
問題文に具体的な情報サービスを想定し、とあるので、そこも前段で触れたら更に良い論文になるかと思います!
今後、設問からの論点抽出だけでなく、問題文もしっかり確認し、論点に漏れがないかを確認していきたいと思います!
問題文に「生成AIを活用する具体的な情報サービスを想定し、」とありますので回答(1)の前段にどのようなサービスを想定したものであるかを入れると後の説明が分かりやすくなると考えます。
また併せて、問題点についても少しだけ言及した方が後に続きやすくなると考えます。
例えば、一般論ですが生成AIの問題点としては以下のようなものがあるかと思います。
・機密情報漏洩
・著作権等の権利侵害
・製造物責任
・大衆扇動
・サイバー犯罪
・雇用の減少
・知的能力の衰退出展:https://yellowfin.co.jp/blog/jpblog-generative-ai-risks
それに応じて課題もより具体的に書いた方が読み手の理解が進むと考えます。
1.ハルシネーション
→〇〇によるハルシネーションへの対応
2.バイアス
→〇〇によるバイアスへの対応
3.法規制、著作権侵害
→〇〇による著作権侵害への対応
以上、気が付いた点をコメントさせていただきました。
コメント欄より引用
パパ造さん、コメントありがとうございました!!
添削結果(Xからの抜粋)
抜粋版ですが、Xで連絡を受けた指摘として私がはっとした内容がありましたので、紹介します。
ご指摘は「dimeizaさん」からで以下にIT系論文の攻略法を公開されております。
技術的観点から答える
技術士としてどうやって解決するのか。
この指摘をされなかったら間違った方向で勉強を続けた可能性が高いです…
dimeizaさん、添削ありがとうございました!
コメント